研究者の方へ

カオスは、理論的にはどんな先の結果も現在の状態から決まるという意味で決定的である。また、僅かの誤差が短い時間でシステム全体広がってしまうという意味で乱雑である。一方、暗号系では暗号文の受け手が送り手のメッセージを再現できるという意味での決定性と、暗号文が通信中に傍受されても元のメッセージを復元するのが難しくあるべきという意味での乱雑さが必要とされる。カオスを暗号系構築に生かす試みがカオス暗号の研究であり、一見やっかいもののカオスを実世界に応用する「カオス工学」の一貫としてもとらえられる。

カオス暗号の研究は90年代前半くらいから盛んになった。しかし、世で使われている暗号のディジタル性とカオスのアナログ性の差異、性能とコストパフォーマンスのトレードオフ、実装可能性などを考慮せずにカオスを用いてひたすら乱雑にすればいい、という流れが先行してしまった。本研究ではその点を考慮し、離散時間カオス力学系を状態離散化してディジタル写像を作り、それを用いて秘密鍵カオス暗号系を構築した。また、力学系の数理的成果を利用して、暗号の安全性を解析した。二値情報を扱うノイマンコンピューターや電子回路との適合性、動作速度、厳密な安全性の証明などが今後の課題である。

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Vesa Sarparanta
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February 2007